関係者でもなんでもないのにしゃあしゃあと試写室に潜り込んで井川耕一郎監督『糸の切れた凧 渡辺護が語る渡辺護』を拝見。
渡辺護という、1965年デビュー以降300本以上映画を撮られてる大ベテラン監督についてのドキュメンタリー映画、だけれども、不勉強な私は渡辺監督の映画を見たことがなく。そんなことでこの映画についていけるのかしらと見る前はだいぶ不安だったのですが、そんな失礼な人間にも十分楽しめる作品でした。面白かった。
122分の大半は、渡辺監督が井川監督の質問に対してタイトル通りご自身のことをずーっとお話してるという内容なんだけど、戦前の幼少時代から空襲体験、初めて助監督についたときのことやデビュー作撮影当時の話しなんかが監督のサービス精神もあり聞いてて全然飽きない、笑える。渡辺監督がいかにプレイボーイだったかとか、衣笠貞之助『雪之丞変化』の細かいカット割とか。監督の処女作『あばずれ』が今は見れる方法がないことがなんとも残念。しかし終始にこやかにお話してる監督のお姿を見てすっかり気の優しいおじいちゃんと思ったところに、終盤少し挟まれる撮影風景での鬼監督っぷりに背筋が凍る。本気で「大根!」と罵られるなんて、私には女優なんて無理。
今作は第一部ということで、以下監督によるピンク映画史や自作解説という内容で十部まで続くそうです。まとめてみるのは大変そうだけど、完成する度見続けていきたい。

打ち上げにもいらした渡辺監督が映画のことをさらっとシャシンとおっしゃってて、なんか感動した。

↑2並んだ。
本日も、私のためみたいなプログラムをありがとうシネマヴェーラさんと極寒の中「柄本明の流儀。」特集に向かい、昨年のフィルメックスで見逃していた相米慎二監督『セーラー服と機関銃』(81年)とまったく初見の池田敏春監督『鍵 THE KEY』(97年)という中々ヘビーな二本立てにチャレンジ。満席ぐらいなるのかなと思ったけどそうでもなかった。
スクリーン初体験の『セーラー服〜』は、改めて、十代のアイドルをコンクリート漬けにしたりレイプ未遂に遭わせたりおっさん俳優とキスさせたり、今なら確実に犯罪レベルなことやってるなあと呆れながら、ぐずぐずと泣いた。私も一応組長の端くれだけどこんな素敵な手下たちはいない。三国連太郎が出てくるシーンが自分の記憶以上にルパンだったことに驚き、渡瀬恒彦の立派なM字額に驚き、柄本明の最低な奴なのに泣かせる芝居に驚き。
谷崎潤一郎を川島なお美か...とちょっと半信半疑だった『鍵』も、エロくて不気味で情けない谷崎的主人公を演じる柄本明の芝居が完璧に期待を裏切らない仕事だったのはもちろん、川島なお美までがだんだん良く見えてくる映画マジックに引っ掛かった。やっぱり色白の女性の裸は美しいねえ。大雪の中に現れる大沢樹生、邸宅の中に突然のどしゃぶり、文芸作品からはみ出る過剰さがかっこよかったです。最近見ないなと思っていた辻香緒里がこんな映画に出ていたのは意外だった(と思ってちょっと調べてみたらいつのまにか童子-Tの嫁になってたとは)。

ほんとは別の映画目的で渋谷に出たんだけれど今日が映画の日だなんてまったく意識になくて、上映10分前にシネコンに着いたらまんまと満席、慌てて近くの劇場ですぐに見れる作品を探した結果、板尾創路監督『月光ノ仮面』に辿りつきました。ちょっと気になってた作品だから別によかったんですけど。お話のベースは有名な古典落語「粗忽長屋」、だそうですが、それについては全然知らない。
富士山をバックに西部劇のような荒野からゆっくりと現れる男、このファーストカットに浅野忠信が出演って板尾監督まさかの『ココロ、オドル』かと一瞬めっちゃテンションがあがり、後々それはさすがに期待し過ぎたかと思うものの、最近のその辺の邦画なんかより全然まともで立派な映画だと感心させられました。堤幸彦監督が「盗みたいカットばかりだ!」とコメントしてはりますが、素直に盗んだ方がいいと思います。
主演の板尾が最初から最後までまともな台詞を一言も発さず正体すら曖昧なままな中、戦争の悲惨さと女の怖さはきちんと伝わったし、ドクター中松の偉大さもしかと受け止めた。ただ、ここまで地味な作りで引っぱったなら最後までそれを通した方がより面白かった気が。ラスト衝撃の銃撃シーンがちょっと『告白』みたいになってて残念(っていうかあそこで「月光」流そうよ...)。せっかくのたーくんの落語ももうちょっと聞きたかった。こんなに無愛想でわけのわからない映画に出資する吉本興業はやっぱりいい会社なんじゃないかとちょっと思った。

今回はコネとか他人の名前とかせこい手を使わずに自分の名義だけで一本勝負、さすがに絶対無理やろうなあと思いながら一応申し込んだオザケンのコンサート、ひょいっと当選してしまった。さすが後厄。

本日やっと鑑賞した劇団ハイバイ の最新公演「ある女」、演出家岩井秀人氏による公式HPの文章によると「何人かの不倫している人に話を聞かせてもらって笑っちゃうくらい興味深かったので、それを集めて一人の女の人の話しにします。(中略)人生はそういう、ちゃんとした時間の中と、ちゃんとしてない時間が交互にやってくるわけで、みんな、その狭間でウワーとなってるんじゃないかしら。」とのことで、その何人かのうちのひとりは私だったりします。ははははは。自分の過去がこんなに凄いお芝居に生まれ変わって、わたしゃ嬉しいよ。マジで。もちろん私はセックス講義には行ったことないけど。
年上の男性と不倫だと知らずに付き合っていた主人公、その事実が発覚してもずるずる続くその関係の中でだんだんプレゼントやお金をくれるようになった相手を思うばかり気がつけば売春する程に堕ちてしまってた、内容だけ説明するとかなりブルーな感じだしお芝居自体も今までのハイバイトはひと味違う怖さと真剣さがありつつもやっぱりゲラゲラ笑ってしまう面白さもありつつの。やっぱり個人的に俳優の平原テツさんがツボ過ぎる。
男女の関係と金銭と暴力の問題を、Wキャストの主演は女装した男性が演じるという、色々考えるべきことが山積の90分でした。でも途中から「ああこれは...」とひとり半笑いになってしまったりして、あんまり冷静に見れてなかったかもしれないので珍しく偉そうなことは言えない。しかしほんとに充実した演劇だったので、おすすめ。

直接面識はなかったけれど川勝正幸さんの訃報にさすがに動揺。90年代めちゃくちゃ影響を受けたし、ご本人は覚えてるわけないだろうけど高校生のとき梅田の映画館で上映されたアルトマン特集のトークイベントに制服姿で最前列にいた私をえらくいじってくれたという思い出が。東京に来たらいつかゆっくりお会いするのが夢のひとつでした。ご冥福をお祈りします。

本日も吉祥寺バウスシアターさんにて勝手に二本立てデーを実施。
実は過去の監督作をまともに見たことがなければ特に見たいとも思わないけれど主演のふたりが気になって園子温監督『ヒミズ』にチャレンジ。問題作として人気らしい原作マンガについては全然知らない。
で、見てみた感想としては、確かに染谷将太くんは泥やらペンキやら目の下のクマやらにまみれて頑張ってたと思うし初めて見た二階堂ふみという女優さんは肉付きのいい宮﨑あおいなんだなと確認出来たしやっぱり窪塚洋介はいい役者だなと感心できた。内容も、80年代生まれのゆとり世代はすぐ人殺しとかしちゃってやっぱりダメねーって話として、個人的には映画として何が面白いのかさっぱりわからなかったけど、こういうアカの他人を追いつめ系の映画が好きな人や不幸こそが青春だと思ってる幸せな人たちが世の中にはいっぱいいるってことは最近薄々気付き始めたので、まあこれはこれである意味いいんだろうな程度に見れた、がしかし。そこに被災地の映像を挟んだりしだすから事態はやっかいに。
東日本大震災で何もかもを失ったらしいホームレスのおっさんは百歩譲って理解するとしても(それでももちろん失笑したけど)、自分の酷い環境を憎みその一因である父親を殺してしまった青年の再生と福島の再生が同じところで描かれるって、それとこれってマジで関係なくね?って言うかそこ一緒にしたら本格的にヤバくね? 若者の未来のために光石研は殺され地震は起こったってか。アホくさ。

と荒んでしまった心に癒しを求めて、夜はアピチャッポン・イン・ザ・ウッズにて『ブンミおじさんの森』を爆音上映で鑑賞。通常の上映で二回見てる作品だけど、まるで初見のような感動と体験。「聞こえない音を聴く」という日本語として成立してないはずの感覚を感じた、気がした。目の前から頭の後ろから聴こえる森の音たちにまるでほんとに森の中にいるような錯覚を覚えるも、現実の森であんなに腹の底に響く低音が轟いてるはずないし。エロナマズまでなんだかかっこよく見えたからすごい。しかしこの映画は、三回見ても三回ともウトウトさせられて、タイの森の如く未だ完全な姿が見えない。

見るタイミングを逃しまくりで痛いなと思っていた映画たちが丁度いい案配で上映されてたので吉祥寺バウスシアターさんにて勝手に二本立てデーを開催、グレッグ・モットーラ監督『宇宙人ポール』 とルーベン・フライシャー監督『ピザボーイ 史上最凶のご注文』 を続けて見てみたら、これが色んな意味でかなり勉強になる組み合わせで、なんと言うか、映画を撮るのには本当に知性って必要なんだなと当たり前のことに改めて気付かされたりしたのでした。『ピザボーイ』、個人的にだいぶヒット。
オタクの冴えない男ふたり組が主人公、会話の端々に映画のタイトルが出てくるようなマニアをくすぐる気の利いた台詞、という共通点がありながら、宇宙人という飛び道具を使いエイリアン映画にスピルバーグやシガニー・ウィーヴァー姐さん本人たちを出演させるびっくりオマージュまで用意するもオタクのやることはどこまでいってもオタクの自己肯定的な世界でしかないんだなとがっかりした『宇宙人ポール』に対し、どこにでもいるピザ屋の兄ちゃんがインド人を巻き込んであっというまに銀行強盗になるだけのお話が下らない下ネタと共にどんどん広がっていく世界を82分にまとめた『ピザボーイ』の感動的なこと。冒頭、主演のアイゼンバーグくんが外見には似合わない派手なカーアクションのシーンに流れるビースティー・ボーイズ、ってだけで満足してしまう32歳なお年頃ってのもあるだろうけど、本気で『スター・トレック』に引けを取らない面白さだと思うので、今更ながら全然話題になってなかったことが謎。みんなもこれから「ほんとにコイツ馬鹿なんだな」と観客に思わせる人物を描くには、3Dメガネをかけた男が「ジェイソンのマスクの穴にファックしてやる!」と叫びながら『13日の金曜日』が流れるスクリーンの前で腰を振るカットをひとつ入れればいいんだと思うよ。
とかなんとか言いながら『宇宙人ポール』もそれなりに笑ったりしたわけで、やっぱりアメリカ映画って凄いなあと感心した一日。そしてこの監督たちの作品両方に出演してるアイゼンバーグくんの次回作がウディ・アレンてのも楽しみ過ぎる。

昨日、とうとうモンテ・へルマン監督『果てなき路』を見てしまい、感動と衝撃でぐらぐらする頭を抱えながら上半身裸の映画監督を眺め酒場で朝まで過ごし、二日酔いでへろへろする頭を抱え昼過ぎに起きてみたらアンゲロプロスが事故で死亡のニュースを知り、なんかもう何が映画で何が現実か本格的にわからなくなってきてしまったので詳しい感想はまた今度。断言できるのは、一回見ただけじゃさっぱり筋書きはわからず、何度も見たからってわかるもんじゃないとは思うけど必ずもう一回見に行くってこと。映画監督ってこんなに女優に手出すの早いものなのか!

もちろん私が見逃すわけにはいかぬと思っていたわりにはだいぶ出遅れてしまったけれどアミール・ナデリ監督『CUT』をようやく。劇場にはノーナデリだったけどえらい混んでるなと思ったらシネマートさんは月曜メンズデーだそうな。
映画製作のためにできてしまった借金を返す金策としてシネフィル監督自身が殴られ屋になる、というだいたいのストーリーはなんとなく知っていたけど、まさかここまでとは。イランからやってきた『死ね!死ね!シネマ』みたいだなとちょっと思った。
主演の西島秀俊さんが冒頭以外ほとんど殴られっぱなしで、美しいはずのお顔がほぼ全篇誰かわからんくらいぼっこぼこになってましたが、またその姿が切なくお美しく、それだけでもう十分。先日朝日新聞のインタビューで「日本で一番狂ってる役者は僕だって証明したい」と仰っていましたが、その事実は間違いなく伝わってまいりました。やっぱりその辺のイケメンとはレベルが違うほんとすごい俳優さんだなーと感動しながら見てたのですが、ひとつだけ文句をつけさせてもらうと、こんな腹筋割れてる映画監督見たことないわ!でしょうかやっぱり。結婚してから急激に太った常磐貴子も、今まで色々無理してたんだろうなあと勝手に安心する最近でしたが、ここでも中々良かった。
終映後、ギャルふたり組が「最後の百本全然わかんなかったねー!」と叫んでいてたが、それでいいんだと思う。

圭くんベスト8進出ほんとおめでとう!これでユニクロ以外のスポンサーがつくといいね!(いくらなんでもユニフォームがダサ過ぎる)

えええ、あのアダム・サンドラーが男女の双子をひとり二役のコメディーって、それだけでやばくない?なんで誰も騒いでないの?私なんか楽しみ過ぎてつい公開初日に見に行ってしまったんですけどデニス・デューガン監督(『エージェント・ゾーハン』の人)『ジャックとジル』。期待を裏切らない面白さ、今日は笑い過ぎて涙流した。こんな映画を極寒の中初日に見に来る周りのお客さんたちもすごくノリが良くて、終了後みんなポスターの前で写真撮ってた。
CM業界で成功し幸せな家庭も持ってる双子の兄ジャックの自宅に地元で結婚もせずひとりで暮らすトラブルメーカーの妹ジルが遊びにくるひと騒動、アダムの芸達者さはもちろん、アル・パチーノ役で出演のアル・パチーノが、詳しいことは書かないけれどだいぶすごいことになってます。これは一見の価値有り(本人役でジョニー・デップも出てます)。他にも多分すごく有名なコメディアンやらスポーツ選手本人が出演してるはず、日本人にはわからないけど。
アラフォーでモテない妹のキャラクターが、いいヤツやけどだいぶうざくて、それがわかる服装とかが上手いのよ。彼女が大暴れしつつ最後にはほろっとさせて締める、までの展開は読めたけど、感動のラストシーンにまさかの仕掛けが。これにはちょっと唸った。自宅のプールでジェットスキーにも面白過ぎて唸ったけど。

ベストテンとか考えるのは趣味じゃない、とか言いつつ年下男子に頼まれるとへらへらしながら答えてました、DOOM!主催の2011年ベスト企画、ハワイ帰りのボケた頭で選んだわりには実は真面目という性格が隠し切れない結果になってしまいましたが、他の方たちのセレクトも興味深いので是非ご一読を〜。うざがられるまでぽんちゃん押しでいきます。

昨日、ようやく録画していた黒沢清監督ドラマ「贖罪」を第一話だけ見たのですが、これはちょっと最後まで見ないと何も言えないかもしれない。監督とか役者とか以前に、個人的に原作がだいぶ無理かも...。作品自体はほんと凄いとは思ったんですけど...。

本日は、私のためみたいなプログラムをありがとうシネマヴェーラさんと雪の中「柄本明の流儀。」特集に向かい、昨年のフィルメックスで見逃していた相米慎二監督『夏の庭 The Friends』(94年)と大好きな監督だとか言いながら初見の森崎東監督『ラブ・レター』(98年)をがっつり見てみたら、これまた両作品とも思いっきり火葬場が重要なシーンの舞台になるような真正面から死ぬことを扱った映画たちで、ぐだぐだ泣いてしまった。火葬場ってほんとのほんとに相手の体に触れる最後の場所だしなあ。
『夏の庭〜』の、どこにでもありそうなのに見たことのない夏休み感と、『ラブ・レター』の見慣れ過ぎてるはずの新宿ゴールデン街に見過ごしていた外国人の姿に涙、この特集に対し両作とも柄本明の出番がほんとに一瞬だったのにはちょっと驚いてしまいましたが、まあいいのか。7、8年前イメージフォーラムさんで開催されてた森崎東監督特集に通っていたとき観客の中に何度か柄本さんご本人のお姿を目撃し、想像以上のガタイの良さにびっくりしたことを思い出した。